ポリーニその10

いずれにしろ「完璧なピアニズム」「完璧なピアニスト」「完璧なテクニック」と常人ならとうの昔に押し潰されてしまったであろうレッテルを背中に背負いながら自身の音楽への姿勢を貫き通し、やはり有数のピアニストとして今日も活躍するポリーニは称賛に値するピアニストであり、これからもあり続けて欲しいピアニストの第一人者であるのです。

ポリーニは「超絶技巧」と言う呪縛から自身を救い上げることの出来た大ピアニスト達の中の一人なのだと思うのです。

さて、マウリツィオ・ポリーニの演奏について、ローベルト・シューマンのあてどなさにも触れていないし、ブーレーズのソナタの可逆性にも触れていない。 バッハは深心の極みに至っているのか、シューベルトの「さすらい人幻想曲」はさすらっているのかにも触れてはいませんが、たぶんポリーニの演奏を語るときは別の作曲家の作品の演奏を取り上げても、何かしら同じような事象を書いている様に思います。 今まで言いました様に音楽への尽きせぬ興味、共感。優れた技巧との精神的な折り合い。聴衆との葛藤。

だけれど、そんなあれこれを忘れてポリーニの演奏に、やはりベートーヴェンのピアノソナタの演奏にマウリツィオ・ポリーニのピアニズムが潜んでいるのだと、ポリーニの秘密を知りたければベートーヴェンのソナタを聴くことだと言っておくことに致しましょう。

単に私の趣味だと言う指摘はこの際なしという事で筆をおきます。

ポリーニ 完(ヴィーン・コンツェルトハウスにて)

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集:(https://ml.naxos.jp/album/00028947941217):マウリツィオ・ポリーニ(Pf)