〜 ある昔話の寓話 〜
*これはフィクションです。特定の人物、あるいは団体を指すものではありません。

しかし、既に遠い昔にお亡くなりになりながら、今でも若い世代の人達にまで訴求力がある珍しいオーディオ評論が一人います。 それが短岡綿男氏です。 彼は放送作家の出だという訳でこれも又、文学の力だけで世に出てきた本来は電子工学であるオーディオを語るには場違いな人と思われましたが、短岡綿男氏は他の「似非」文学作家(オーディオ評論家文学派)とは違う道を進んだ珍しい人でした。 彼の選んだ道は自作派でした。 しかも大変に分をわきまえていたのはアンプリファイヤーやイコライザーなどの本当に電子工学が必要とされる領域の設計再作ではなく、素人が手の出せる日曜大工的なスピーカーの製作、いやスピーカー「ボックス」の製作を手掛けた事にあります。 スピーカユニットは大メーカー製の既製品を使い「箱」を手作りするのです。 これは大変な人気を集めました。 そして、手作りはコストが安く上がることもあり、短岡綿男氏はオーディオ全体にも低価格、庶民派のコンセプトを押し出して評論活動をしたのです。 高級品以外は見向きもしない岩山夏樹氏や沼野岸彦氏辺りとは全く違った世界観をアピールしました。
短岡綿男氏は己が文科系であり電子工学を振りかざすのには無理があると悟っていましたし、さりとて文学の力だけで電子工学の塊のオーディオ機械を評価するのにも限界があると認識していたのでしょう。 短岡綿男氏はそこで数値的なものを評価に持ち込んだのです。 それが重量、いえ、かっこよく専門的な感じのする言い方なら「質量」でした。
要は、重ければそれだけ良い素材を使い、中身が詰まっていると言う大変分かりやすい考え方です。 ですが電子工学的な数値化されたデーターが間違いなく存在するのですからこれは一つの盲点でした。