〜 ある昔話の寓話 〜
*これはフィクションです。特定の人物、あるいは団体を指すものではありません。
ところで作家先生がもたらしたその功績とはオーディオ評論の世界を楽にして一見するくらいでは手抜きが手抜きではなくなるように献身した事でした。
一台のプリメインアンプリフィヤーを評価するのに、本気で取り組めば、ただならぬ計測機器の数々を持ち込み電気特性の計測とデーターの収集、物理的、機械要素的計測と、机上でも回路設計が正しいのか、効果はあるのかの検証と相まって、突合せを行い、最後に音楽を聞いて人間としてどう聴き取れるか、それは回路のどこがどのような作用をするからなのかを突き止めて明白にしなくてはなりません(もちろん、そんな真摯な試験をすることなどゼロとは言いませんが大変に少なかったはずです)。
明白にするためには恐ろしいほどの手間暇がかかります。 複数のアンプリファイヤーを評価するなどと言えば一週間や10日で出来る仕事ではなくなります。 ところが、ここで文学が登場するのです。
「AとBのアンプリファイヤーを比較するとAよりBの方が空間の広さを表現することが出来るが、Aの方が個々の楽器の分離が良く分かる」良くオーディオ雑誌に書かれている文章はこんな塩梅です。 読んでいる方はなるほどとついつい頷いてしまいますが、はて?
空間の広さとは何か? 分離が良く分かるのはそれはそれで大変結構なことだけれど、では、2台のアンプがそうした違いを見せるのはいったい何が違いどちらが優れているのかを説明するのが本来の検証であり評論であり、製品の評価であるのですが、そこはまったく触れずに、いえ、本当の事を言えば触れたら大変な労力と、メーカーなどのスポンサーを敵に回しかねない事ですから触れずにではなく触れることが出来ないでスルーしてしまうのです。